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Author:ガブリエルさとし
40代の独身男。

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遺稿集 ★★★★

遺稿集遺稿集
(2008/03/06)
鴨志田 穣

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 2007年3月20日に亡くなった鴨ちゃん(鴨志田穣)の単行本未収録原稿をまとめた1冊。『遺稿集』というタイトルそのまんまの本だ。
 OZmallというサイトに連載されていた「カモのがんばらないぞ」「恋のバカっ騒ぎ」、親友ドイさんが経営している出版社・寿郎社のサイトに掲載された「旅のつづき―通りお通り宮古島」「邂逅」、未完の小説「焼き鳥屋修行」が収録されている。

 「恋のバカっ騒ぎ」は、版元が設定する合コンに参加した鴨ちゃんの体験記だ。鴨ちゃんもよくわかっているように女性陣と鴨ちゃんを含む男性陣とがかみ合っていない。本人もいったい何を取材したらいいのか戸惑っているようだ。ここにはその戸惑いが描かれているだけで、正直あまり面白くない。

 けれども、『酔いがさめたら、うちに帰ろう』の続きとも言える「カモのがんばらないぞ」と、初めて主人公にコウ吉という自分以外の人物を設定した「焼き鳥屋修行」の2つはとてもいい。

 「カモのがんばらないぞ」は最後にサイトに掲載されたのが2007年3月と、文字通り絶筆となった作品だ。精神病院のアルコール病棟から、癌研病院に転院する鴨ちゃん。余命はもって5ヵ月とすでに医師から宣告されている。病院の近くから水上バスに乗り、若き日々を過ごしたバンコクのチャオプラヤー川に思いをはせる。バンコクの水辺には人々の生活のにおいがし、東京にはそれがない。それでも、船を降りる直前に魚が跳ねるのを目撃し、東京湾も生きているんだと感嘆する。
 抗癌剤の投与が決まり、それなら髪が抜ける前に丸坊主にしてしまおうと床屋へ行った鴨ちゃんは、気まぐれでモヒカン刈りに変更する。悪いところをすべて取り除いてしまうか、抗癌剤である程度抑えてから副腎を摘出するか――すべてを摘出してしまおうと鴨ちゃんは決める。「俺、戦うつもりだよ」
 しかし、この物語を書き終えることなく、鴨ちゃんは逝ってしまう。

 「焼き鳥屋修行」のコウ吉は、名前こそ違うが明らかに鴨ちゃんの分身だ。東京での予備校通いに耐えられなくなったコウ吉は、たまたま友人と入った焼き鳥屋の誘いにのって、店員として働き始める。小さな焼き鳥屋の仕事の様子が丁寧に描かれている。包丁を研ぐ。つくねを作る。鶏をさばく。そういった作業が細かく正確に描写されていて、実際に目の前で見ているような気持ちになる。
 未完に終わったこの小説、「焼き鳥屋修行」というタイトルがつけられているが、焼き鳥屋時代に終わらず、もしもこの調子で書き続けていったら、壮大な自伝小説になっていただろう。それにはあまりにも時間が短すぎた・・・。読んでみたかったなあ。

 鴨ちゃんの死はあまりにも早すぎた。いま改めてそう思う。

応援よろしくお願いします。⇒   

妖怪ハンター 地の巻 ★★★★★

妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)妖怪ハンター 地の巻 (集英社文庫)
(2005/11/18)
諸星 大二郎

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<内容紹介>
 ぬばたまの闇の底どよもす呻き声。冥き世界にうごめく異形の者ども…。異端の考古学者・稗田礼二郎が暴きだす、触れてはならぬ…暗黒の日本史!!

 高校時代から好きだった諸星大二郎を紹介する。
 稗田礼二郎が活躍する『妖怪ハンター』シリーズが2005年に文庫になった。その第1弾がこの「地の巻」だ。「黒い探求者」「赤い唇」「生命の木」「海竜祭の夜」「ヒトニグサ」「闇の客人」「蟻地獄」「闇の中の仮面の顔」「死人帰り」の各短編が収録されている。
 いちばん古い「黒い探求者」「赤い唇」「死人帰り」が1974年の作品。いちばん新しい「蟻地獄」が1992〜1993年の作品だ。個人的には昔の作品の方が好き。特にいいと思うのは「生命の木」と「ヒトニグサ」だ。
 「生命の木」は、東北地方のあるかくれキリシタン村でのできごとを描いている。この話では、稗田礼二郎は何の活躍もしない。だが、彼はとてつもない事件を目撃することになる。
 「ヒトニグサ」では、人の死体に根づき、根づいた死体の姿によく似るヒトニグサという植物が出てくる。登場人物の一人がこのヒトニグサをなたで叩いているコマはやけに印象的だ。
 諸星大二郎はこの本のような日本の伝説や言い伝えに基づいた作品のほかに、中国やアフリカの神話などにインスパイアされた作品も描いている。また、それらとはまったくかけ離れたかに見えるギャグやSFチックな作品もある。
 いずれも独特の味わいのあるマンガなので、人によって好き嫌いはあるだろうが、諸星大二郎が現代日本のマンガ界にひときわ輝く巨星の一人であることは間違いない。
 はっきりいって、彼の全作品がおすすめだ。

応援よろしくお願いします。⇒   

将軍の娘 ★★★☆

将軍の娘〈上〉 (文春文庫)将軍の娘〈上〉 (文春文庫)
(1996/12)
ネルソン デミル

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将軍の娘〈下〉 (文春文庫)将軍の娘〈下〉 (文春文庫)
(1996/12)
ネルソン デミル

商品詳細を見る

<内容紹介>
 合衆国陸軍犯罪捜査部、相手が将軍でも逮捕できるこわもて集団。その通称CIDのブレナー准尉が任されたのは、基地司令官の一人娘でエリート美人大尉が手足を杭に縛られ、全裸で絞殺されたという、まさに猟奇事件。事件の萌芽は、全裸で絞め殺された将軍の娘で陸軍のホープ、新兵募集のポスターのモデルでもあったアン大尉のウェストポイント士官学校時代の一つの出来事に起因しているのが明らかにされてくる。しかし、陸軍犯罪捜査官ブレナー准尉には陰湿な圧力がかかりはじめた・・・。


 合衆国陸軍犯罪捜査部・CIDのブレナーが、軍の基地内で起きた猟奇的殺人事件に、私生活において微妙な関係にある女性パートナー、シンシアと共に立ち向かう。初めはレイプ殺人と思われた事件だが、ブレナーが捜査を進めていくと、事件の裏には過去の深い闇が関係していることが次第に明らかになってくる。

 軍内部での犯罪捜査という珍しい題材であり、事件自体とその真相のショッキングさを含めて、飽きさせない。謎解きの要素もあるが、この面では本格推理小説と比べたらいささか論理的でないところがあって、あくまでも二次的なものだ。
 どうしてその人物が犯人なのかという肝心な部分で「本能でそう感じる」みたいなことが根拠になってしまっている。実際の捜査ではそういうことが重要なのかもしれないが、小説の読者としてはどうしても物足りなさを感じてしまう。

 登場人物のほとんどが自分の知っていることを極力隠そうとしている状況の中で、ブレナーが一歩ずつ真相に迫っていく部分に、この小説の醍醐味があるといえるだろう。

 私はこのシリーズの次作・『アップ・カントリー』の方を先に読んでいたため、主人公のブレナーを55〜60歳くらいだと思い込んでいたのだが、じつは私とほぼ同い年のようだ。そういえば、『アップ・カントリー』でもけっこう元気で、やることはやってたもんなあ。

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フォレスト・ガンプ ★★★

フォレスト・ガンプ (講談社文庫)フォレスト・ガンプ (講談社文庫)
(2000/02)
ウィンストン グルーム

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<内容紹介>
 知能指数は並以下だが、多くの才能に恵まれたフォレスト・ガンプ。スポーツをすればたちまちスター。ベトナム戦争では名誉勲章。果ては宇宙飛行士として宇宙に飛び立つ。大切な人への想いを胸に抱いて、フォレストは無垢な心のまま激動の時代を生きていく。世界中に社会現象を巻き起こした痛快な冒険談。

 フォレスト・ガンプといえば、トム・ハンクス主演、ロバート・ゼメキス監督の1994年公開の映画がまず頭に浮かぶ。映画は、1995年のアカデミー賞で作品賞・監督賞など6部門を受賞した。
 本書はその原作本だが、その内容は映画とかなり違っている。ガンプの永遠の恋人・ジェニーとの関係、ダン中尉の設定など、違いはいろいろあるが、ガンプ自身についても違うところがある。映画では、フットボール、卓球などに驚くべき才能を発揮したガンプだが、小説ではそれだけでなく、物理学や音楽でも天才的な能力を示す。映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じたレイモンドと同じようにいわゆる”サヴァン”なのだ。
 宇宙飛行士になったり、プロレスラーになったりというエピソードも映画にはない。逆に、突然走り出してアメリカ大陸を何度も横断するという映画の中の話は小説には出てこない。
 小説の方がおもしろいと感じるところもあるのだが、正直言って、宇宙飛行士のエピソードは感心しないし、ないほうがいいと思う。そういう部分は他にもいろいろある。
 それでも、映画のフォレスト・ガンプが好きな人なら、小説の方も気に入ると思う。まあ、気に入らない人もいるかもしれないが。
 続編の『フォレスト・ガンプ2』も出ている。

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サム・ホーソーンの事件簿〈1〉 ★★★☆

サム・ホーソーンの事件簿〈1〉 (創元推理文庫)サム・ホーソーンの事件簿〈1〉 (創元推理文庫)
(2000/05)
エドワード・D. ホック

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<内容紹介>
 橋の途中で消え失せた馬車、“小人”と書き残して密室で殺されていた車掌、行き止まりの廊下から消え去った強盗、誰も近づけない空中で絞め殺されたスタントマン等々、次々と発生する怪事件! 全編不可能犯罪をあつかった、サム・ホーソーンものの初期作品十二編に加え、特別付録として、著者の代表作の一つであり、これまた不可解な墜死事件の謎を解く「長い墜落」が収録されている。

 エドワード・D・ホックといえば、言わずと知れた不可能犯罪ものの大家だ。本書は、ホックが創作した不可能犯罪専門探偵といえるサム・ホーソーンを主人公とした短編集。
1920年代から1940年代のアメリカ、ニューイングランドの架空の田舎町ノースモントが舞台となっている。サム・ホーソーンはその町で開業する医師だ。彼の行くところ、まったく不可能と思われる事件がなぜか次々と起こる。すでに老人となったサム・ホーソーンが、訪ねてきた客にそれらの事件の顛末を話して聞かせるという形式を取っている。
 このシリーズは創元推理文庫から現在5冊発行されている。本書はその第1巻だけあって、ホックの序文が掲載され、さらにサム・ホーソーンシリーズ以外のホックの短編「長い墜落」が収録されるなど、充実した内容となっている。
 不可能犯罪ものというのは、事実が明らかになったとき「なんだそりゃ」とガッカリさせられるものが少なくないのだが、その点、本書の各短編は粒ぞろいといっていい。
 個人的には「投票ブースの謎」のトリックがいちばん鮮やかだと思った。
 ほとんどの場合、サム・ホーソーンは1度誤った結論に傾きかけ、その後に真相を発見するというパターンを取っている。1つの作品が30ページ程度という短編で、こういうことができるのは、ホックの伏線の張り方がうまいからだろう。
 本書は本格推理小説なのだが、サム・ホーソーン医師とそれを取り巻く町の人々の暮らしぶりがその時々の社会情勢とともに描かれているため、そちらを楽しむという読み方もできる。事件が時系列に沿って並べられており、作品中でも過去に起こった事件等を踏まえて時間が流れている。サム・ホーソーン医師の周囲の人々は複数の作品に何度も繰り返し登場するので、読者にとっておなじみのキャラクターになる。
 禁酒法や大恐慌などが時代背景として語られ、事件にも影響を及ぼしている。
 価格が文庫本にしてはやや高い気がするが、本格推理小説ファン、特に短編ファンには文句なくお勧めの1冊だ。

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